未来を照らす、薄くて軽い太陽電池(後編)|ペクセル・テクノロジーズ株式会社

はじめに
前編では、ペロブスカイト太陽電池の特徴や発電の仕組み、研究に取り組むペクセル・テクノロジーズ株式会社(以下、ペクセル・テクノロジーズ)についてご紹介しました。
後編では現在、社会に実装するために取り組まれている実証実験や、企業連携による開発の可能性についてご紹介します。
平地が少ない日本の救世主?
日本は、国土の約7割が山岳地帯に覆われており平地が少ないという特色があります。そのため、「重く、大きい」という特徴を持つ従来のシリコン太陽電池は設置する場所が限られてしまい、さらには住民との合意形成が十分に図られずに設置されるケースも見られました。しかし、ペロブスカイト太陽電池の特徴を生かせば、面積が狭いなどの理由で設置が難しかった場所でも太陽電池が設置できることが期待されています。

過酷な環境下で性能を検証
「薄く、軽く、曲がる」という特徴を持つペロブスカイト太陽電池を実用化していくため、ペクセル・テクノロジーズは様々なプロジェクトに取り組んでいます。その一つが、横浜市の大さん橋デッキで行われている実証実験です。
海に面する大さん橋は、潮風や雨、強い日差しなど、太陽電池にとって過酷な環境です。このような環境下で、実用レベルの耐久性を持っているか、破損時に太陽電池の交換が可能かなどを検証することで、技術的な課題を洗い出しています。同社の総務部で広報を務める清田竜彦氏は、「様々な条件下で発電性能や劣化状況を集めるために、詳細にモニタリングしています。良い結果でも悪い結果でも、そこで得られるデータは非常に貴重で、今後の開発にフィードバックしていきます」と期待を込めています。
(画像提供/ペクセル・テクノロジーズ株式会社)

「環境に配慮し、回収まで見越した普及を」
現在のペロブスカイト太陽電池は、ごく微量ですが、人体や環境に影響を与えるとされる鉛を含んでいます。また、発電を行うペロブスカイト層自体が水溶性のため、風雨にさらされた結果、自然界に鉛が溶けだしてしまう危険性もあります。
ペクセル・テクノロジーズでは、将来的な社会実装に備えて、使用済みペロブスカイト太陽電池の回収・リサイクルシステムの構築を推進しています。製品の販売と同時に回収システムを確立することで、環境問題にも配慮した製品開発を目指しています。
ペロブスカイト太陽電池の生みの親である宮坂力氏は、「現在普及しているシリコン太陽電池の回収については、環境面まで考慮されていない部分がありました。そこで、ペロブスカイト太陽電池では、たとえば、製品を購入したユーザーに回収を約束してもらい、使用済み製品を回収した際にはキャッシュバックを行うなどの仕組みを検討しています。これにより、環境負荷を低減するとともに、貴重な資源の再利用を促進することができます」と画策しています。
(画像提供/ペクセル・テクノロジーズ株式会社)

「オールジャパン」で世界に挑戦
ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けて、大手企業も積極的に開発を進めています。他方で、世界に目を向けると、中国メーカーの技術力向上や生産能力拡大は著しく、競争は激化しています。
宮坂氏は、国内企業同士が連携する「オールジャパン」体制で開発を進めることの重要性を強調しています。「中小企業の柔軟な発想力と大手企業の資金力・生産力、そして大学や研究機関の高度な技術力を組み合わせ、互いに協力することで、中国をはじめとする世界のライバル企業に負けない、高性能で低価格なペロブスカイト太陽電池を開発し、市場競争力を確保していくのが重要です」
「家電のように、当たり前の存在に」
2024年12月、国が策定する「第7次エネルギー基本計画」において、ペロブスカイト太陽電池による発電量を20ギガワットにする目標を打ち出しました。これは一般家庭550万世帯分に相当し、再生可能エネルギーへの大きな期待が現れています。実際、ペロブスカイト太陽電池が社会実装されれば、壁や曲面など様々なところに太陽電池を設置できるようになることで、私たちの生活を大きく変える可能性を秘めています。
「回収面も環境面もクリアし、コスト面も抑えることができれば、ペロブスカイト太陽電池は、車や服、カバンなどあらゆるものと組み合わせることができます。発電しながら走る車や自家発電で電力をまかなう住宅といった、それぞれが発電するようになれば、発電所や送電網は必要最低限でまかなえます。いつか、冷蔵庫や電子レンジに代表される家電のようにペロブスカイト太陽電池が家庭で当たり前の存在となって、エネルギーを自給自足しながら環境にも優しい、そんな未来が実現するかもしれません」
特に川崎市のような都市で、ペロブスカイト型太陽電池は活躍すると宮坂氏は話します。「川崎市は古くから立ち並ぶ工場や倉庫が多く、中には屋根が老朽化して重いシリコン太陽電池を設置できない建物も多くあります。しかし、軽量で柔軟性のあるペロブスカイト太陽電池なら、そのような建物にも設置できます。また、ビルが立ち並ぶオフィス街でも、窓にペロブスカイト太陽電池を設置すれば、オフィス街自体がひとつの大きな発電所になるのです」

次世代太陽電池のペロブスカイト太陽電池はまだ始まったばかり。宮坂氏が学生との出会いをきっかけにこの電池を開発したように、「薄くて、軽くて、曲がる」という特性とまだ見ぬ何かが組み合わさりながら、社会に新たなインパクトを残していくのでしょう。