生田緑地を起点に進む官民協働の脱炭素社会づくり

再生可能エネルギーの普及に向け、行政と民間企業が連携する動きが広がっています。2024年6月に発足したSDGsパートナーシップ「グリーンアライアンス」(主幹:ハンファジャパン株式会社)は、川崎市と太陽光発電の普及拡大に関する連携協定を締結しました。2025年8月20日には川崎市役所で締結式が行われ、具体的な活動が動き出しています。このパートナーシップの活動の背景や、川崎市に寄贈された太陽光発電設備と蓄電池、目指す未来について、グリーンアライアンス事務局企画推進統括の山口寛法さんに取材しました。
連携で課題解決の実効性を高める
グリーンアライアンスは、太陽光発電設備等を販売するハンファジャパン株式会社がSDGs(持続可能な開発目標)貢献に向けて設立した、複数の事業者が参画するSDGsパートナーシップ制度です。2026年1月時点で38社が参画し、再生可能エネルギーを中心とした社会貢献活動を推進しています。
設立の背景には、ハンファジャパンの親会社であるハンファグループが掲げる「ともに行けば遠くへ」という経営哲学があります。グリーンアライアンス事務局を務める山口さんは、「地球温暖化や生物多様性の減少といった多様化する環境課題に対し、一社単独で取り組むのではなく、志を同じくする複数の企業がパートナーとして知見を出し合い、協力することで、各地域の課題に応じた実効性の高い活動が可能となります」と意義を語ります。
グリーンアライアンスが進める具体的な活動は5つの「Green Action」とされ、以下の通りです。
Green Action 1 グリーンギフト:太陽光発電設備の寄贈による地域社会の支援
Green Action 2 開発途上国支援:開発途上国におけるマングローブの植林
Green Action 3 エコモビリティを通じた環境貢献活動:EV(電気自動車)やe-Bike(電動アシストモーター自転車)など、低炭素な移動手段の啓発・連携イベントの開催
Green Action 4 リユース・リサイクル:太陽光パネルの資源循環と地域社会への貢献
Green Action 5 環境教育の推進:太陽光発電設備の寄贈を契機とした次世代を担う子どもたちや学生への実践的な環境教育プログラムの提供
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Green Action 3 「野沢温泉自転車祭」の様子
行政の政策と民間の技術を一つの形に
グリーンアライアンスは、自治体との協定締結などの連携も広げています。川崎市と2025年8月20日に結んだ「太陽光発電の普及拡大に関する連携協定」もその一つです。
川崎市は、太陽光発電設備の設置義務化など、脱炭素社会の実現に向けた具体的な施策を次々と打ち出しています。こうした市の姿勢と、グリーンアライアンスの活動方針が合致したことで、今回の協定が実現しました。
福田紀彦川崎市長は締結式で「本市は太陽光発電設備設置義務化など脱炭素ドミノを起こすための取組を行っており、今回の連携を通じて、市民に対してより一層の太陽光発電の普及促進ができることに感謝申し上げます」と述べ、民間との連携による施策の加速に期待を示しました。
グリーンアライアンス事務局代表の李秦基さんは「川崎市は太陽光発電の普及に向けた積極的な施策展開と情報発信を行っており、非常に注目度が高いため、グリーンアライアンスとしても川崎市と連携し、太陽光発電の環境教育にも力を入れていきます」と語ります。
自然とエネルギーが調和する象徴「生田緑地」からのスタート
川崎市内におけるプロジェクトの具体的な第一歩として選ばれたのが、生田緑地東口ビジターセンターへの太陽光発電設備(約5kW)と蓄電池(約8kWh)の寄贈・設置です。
生田緑地は、豊かな自然を有する首都圏有数の緑地です。その玄関口である東口ビジターセンターという場所が選ばれた理由について、山口さんは「市には色々な場所をご提案いただきましたが、日照条件や設置条件を加味して最適な場所を選ぶことができました」と振り返り、「生田緑地の自然を育む太陽の光から電力が生み出される姿を見てもらい、自然を守ることとエネルギーをつくることが、地続きであることを知るきっかけになれば」と期待を込めます。
次世代の意識を育む、体験型の環境教育
連携の柱の一つである環境教育も、すでに着実な歩みを進めています。2025年11月には「みんなの川崎祭」や「&EARTH スマートライフプロジェクト in ラゾーナ川崎プラザ」に、川崎市と共同でブースを出展しました。
ブースでは、牛乳パックを活用したソーラーハウス作りや、太陽光発電で動く風車の工作ワークショップを実施し、子どもたちが再生可能エネルギーの仕組みを楽しく学べる機会を提供しています。事務局の山口さんは「未就学児など、より早い段階からエネルギーに親しんでもらうことが重要だと考えています」と語ります。
その言葉通り、グリーンアライアンスでは低年齢層向けの啓発に注力しており、オリジナル絵本『でんきちゃんのだいぼうけん』を制作(詳細関連リンク)。太陽光発電設備を寄贈した幼児教育施設などへ提供しています。生田緑地においても、こうしたノウハウを活かした体験型プログラムを展開し、子どもたちやその保護者が再生可能エネルギーを身近に感じる場づくりを継続していく方針です。
地域エネルギーが循環する「未来の景色」を目指して
今後の展望について、グリーンアライアンスは川崎市での取り組みを、全国へ広げるべき先行モデルとして位置づけています。
山口さんは「グリーンアライアンスはまだ始まったばかり。施策を行うだけの『実行』ではなく、脱炭素の取り組みを普及させる『実効』まで導けるよう、全国の自治体へと広げていきたい」と、今後の展開を見据えます。
川崎市とグリーンアライアンスは、生田緑地での設備設置を皮切りに、市内の他の公共施設への寄贈や設置についても継続して協議を進め、行政と民間が協働する持続可能なまちづくりの姿を追求し続けていきます。
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山口さんと太陽光パネル。左が一般的な太陽光パネルで、右が防眩性太陽光パネル。防眩性太陽光パネルはガラス表面に凹凸加工を施し、太陽の反射光を散らしてまぶしさを抑える機能があります。