脱炭素を実現する未来を「届ける」ために|ヤマト運輸の高津千年営業所が再エネ100%で稼働中

ヤマト運輸の高津千年営業所は2024年10月16日から、営業所に配備した全25台の電気自動車(EV)や営業所の電気などすべての消費電力を川崎市内でつくられた再生可能エネルギー(再エネ電力)再エネ電力でまかなっています。ヤマト運輸株式会社川崎主管支店の鈴木浩治主管支店長は、「地域との連携を深めながら、環境負荷の低減と川崎市が進める脱炭素の取組に貢献します」といいます。
グループ全体で2050年温室効果ガス自社排出実質ゼロへ
2050年までに温室効果ガス自社排出実質ゼロを目標に掲げるヤマト運輸株式会社(以下、ヤマト運輸)。物流企業として、地球温暖化に影響する温室効果ガスを削減することは社会的な責務と捉えており、「持続可能な未来の実現」に貢献する企業を目指しています。
具体的な数値目標として4つの主要施策を掲げており、2030年までに ①EVを2万3500台導入、②太陽光発電設備810基設置、③再エネ電力由来電力使用率を70%まで向上、④クール宅急便で使用するドライアイスの使用量ゼロの運用を構築する としています。

高津千年営業所から脱炭素化に向けた行動変容を
ヤマト運輸は、高津区では1日で約1万個の荷物をお届けしています。再エネ電力100%で稼働する営業所となったきっかけのひとつに、川崎市の脱炭素戦略「かわさきカーボンゼロチャレンジ2050」があります。鈴木主管支店長は、「私が2022年に川崎主管支店に着任した時、福田紀彦市長とお会いしました。川崎市では『かわさきカーボンゼロチャレンジ2050』を策定しており、福田市長から脱炭素の取組への熱量を強く感じたのを覚えています」と振り返ります。
「高津千年営業所がある高津区では、脱炭素モデル地区『脱炭素アクションみぞのくち』(※)として、市民の行動変容を促す様々な取組が進められています。集配業務などを通して毎日多くのお客さまと接点があるヤマト運輸は、この取組に賛同すると共に、私たち自身の行動も変えていく必要があると考えました」といいます。
※脱炭素アクションみぞのくち・・・高津区溝口周辺地域で脱炭素化に資する身近な取組や先進的な取組を集中的に実施し、取組の効果や利便性を実感してもらうことで、市民一人ひとりの環境配慮型のライフスタイルへの行動変容を促進し、脱炭素社会の実現を目指します。

太陽光発電設備とエネルギーマネジメントシステム
現在、高津千年営業所の屋根に約100枚の太陽光パネルを設置し、年間約4万5000kWhの電力を発電しています。この発電量は、営業所で消費する電力の約25%に相当します。また、太陽光パネルが日中に発電した電力を蓄電池にためて、主に夜間のEV充電に使用しています。
さらに、太陽光発電で不足する電力は、川崎未来エナジーから再エネ電力(川崎市内のごみ焼却施設から生み出される電力)を調達しており、営業所で使う電力のすべてを再エネ電力でまかなっています。

太陽光パネルで発電した再エネ電力や川崎未来エナジーから調達した再エネ電力は、ヤマト運輸が独自に開発したエネルギーマネジメントシステムで効率的な運用を行っています。システムの導入前は、EVの充電を稼働終了後の夜間に一斉に行うため、消費電力のピークが集中し、電力コストが増えてしまう課題がありました。システム導入後は、充電のピークを平準化し、電力コストを抑えています。高津千年営業所は、環境負荷を低減するだけでなく、電力コストも抑えながら、地域におけるエネルギーの地産地消を実現するモデルケースとして注目を集めています。これらの取組が評価され、2024年12月に環境省が主催する「気候変動アクション環境大臣表彰」を受賞し、2025年3月に日本経済新聞社が主催する「2024年度NIKKEI脱炭素アワード」の大賞を受賞しました。
<エネルギーマネジメントシステムについて説明する様子>

意識の変化、続々
高津千年営業所が再エネ電力100%で稼働を始めて3カ月(2025年1月時点)が経ちましたが、営業所では様々な変化が起きています。まず、集配業務を行うセールスドライバーに変化がありました。EVの導入当初は、「本当にEVで配達先を回り切ることができるのか」「配達途中で動かなくなってしまったらどうすればいいのか」といった不安の声がありました。しかし現在は、「静かで乗り心地が良い」「ガソリンスタンドへ行く手間が省け、業務効率が向上した」「稼働前に充電状況をエネルギーマネジメントシステムの画面で見て、満充電されていることを確認できるため、安心して稼働に出られる」との声が上がっています。
また、高津区主催の市民の方向けのイベントに出店した際に高津千年営業所の今回の取組を紹介したところ、「先進的な環境の取組をしているんですね」など多くのお声をいただきました。さらに、市民の方だけでなく、「再エネ100%を実現した営業所をぜひ参考に見学したい」ということで、他企業も視察に訪れています。
<EVに貼られたゼロカーボンステッカー>

市民の方からは、「EVは静かだし、環境に配慮していることが良い」というお声もいただいています。鈴木主管支店長は「セールスドライバー一人ひとりの『自分たちの仕事が気候変動対策につながっている』という意識が高まっている。市民の皆さまには、このEVが市内で出たごみを燃やしてつくられた再エネ電力で走っていて、市民の生活を支える『地域循環型モデル』の一つになっていることをさらに知ってもらえたらうれしいですね」と話します。
<EVに充電している様子>

災害時の拠点や環境教育
「通常配達時以外にも、高津千年営業所には役割があります」と鈴木主管支店長は言います。その一つが、災害時に地域を支える役割です。蓄電池を備える高津千年営業所は、停電時でも電力確保が可能です。もう一つが、環境教育という側面です。ヤマト運輸では「クロネコヤマト環境教室」という出張授業を行っています。「普段は、小学校4~6年生を対象にで『クロネコヤマト環境教室』を実施していますが、川崎市市立橘高校から川崎市を通じて要望があり、2024年6月に授業を行いました。学校や生徒の方々の環境意識の高まりを感じます」と言います。
こうした取組以外にも、2024年6月~8月に実施した「オープン型宅配便ロッカーを使って再配達を減らそう!キャンペーン」を行った際には、キャンペーン後のアンケートで「脱炭素に取り組む川崎市に住んでいて誇りに思う」という市民の声も寄せられたといいます。
今後、高津千年営業所の取組を川崎市内の他エリアへ水平展開していくことを目指しています。鈴木主管支店長は、「市民の皆さまや多様なパートナーの皆さまと一緒に脱炭素に取り組んでいきたい」と脱炭素の未来を見据えています。

教えてくれた人
ヤマト運輸株式会社 川崎主管支店 主管支店長 鈴木浩治さん